ドグラ・マグラ

はーんです。

詰パラ2017年4月号 大学11「空にかけ橋」

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「空にかけ橋」

詰将棋パラダイス 2017年4月号 大学11 半期賞

 

11角 56玉 12角 23歩合 同角成 34歩合 同桂 36成香 22桂成 55玉 33馬 44桂合 56歩 同玉 34馬 45飛合 57歩 55玉 45馬 同桂 56飛 同桂 A32成桂 44飛合 同馬 同香 56歩 同玉 57歩 同桂成 66飛打 同香成 同飛 55玉 67桂 同成桂 56香 迄37手

 

A 成桂をどこに開いてもよい。非限定。

 

ちょうど3年ほど前に投稿したペンネームでの初入選作。

この構想自体はたしか8年ほど前から思いついてはいた。その当時の構図では玉は66におり、11角 67玉 12角 76玉 34桂……という手順を考えていたと思う。しかしさすがに一筋縄ではいかず、色々試行錯誤は繰り返したものの、結局うまくいかないまま時は流れた。

詰将棋から離れてしばらくした後、なんとなく未完成の構想リストを見返して、この構想に目をつけた。その時、ふと玉を55に配置し上下を繰り返すのみの構成にすれば実現できるのでは?と思いついた。そこからは大きな挫折もなく、完成図に辿り着いた気がする。

こうして本作は、発想から5年の時を経て日の目を浴びることになった。

タイトルは角の二つの遠打と、その道を桂馬が走る様子を架け橋に見立てている。また「かけ」には「架け」の他に「描け」「駆け」という字を「掛け」ているので、あえて平仮名にした。ふざけた作品名が多い自作の中では、それなりに気に入っているタイトルである。

 

本作は構想作に分類されるだろうし、そうした方が便利なので私自身もさっきから構想構想と言っているが、実は私は本作は構想作であって構想作でないと考えている。

私が本作を作る上で最も心がけていた点は、構想の目新しさでも美しさでも、ましてや収束でもない。11と12の地点が完全に初形の枠外からはみ出るようにする、それが一番重要なことであった。そうでないと、せっかくの遠打のインパクトが薄れてしまうではないか。

構想作家の方々は「そんなのは本質的なことではない」などと一蹴するかもしれないが、そもそも本作は「打ち歩を利用して11角と12角の連続遠打ができると面白そうだな」という妄想からスタートしている。つまり構想と表現方法はセットであり、私にとって遠打の感触は本作の価値そのものなのである。

ちなみに本作の構想を詰将棋の専門用語を用いて言い表すなら「連続ブルータス手筋」になるのだが、私は○○手筋を始めとする「専門用語」が好きではないので、あえてその表現は使わなかった。この考えについては、また別の記事で詳しく書こうと思う。

なお非限定はもちろん消したかったが、自分の創作技術では納得のいく消し方は思いつかなかった。そもそも私はメイン部でない非限定はそれほど気にする方ではないので、無理して消さなくてもいいかと思った次第。

 

私は構想作家ではないが、構想作も好きである。しかしそれ以上に手順をパッと見ただけで狙いや面白さが伝わる、サーカスのような作品を最も好む。構想作を作る時も、その表現方法に特に気を使っている。

本作は構想と表現が非常にうまくマッチしたと思っている。現時点で、自作の中編の中で最も気に入っている作。